先日実家の洋服を整理していたところ、中高の頃に買ったと思われる「グランドキャニオン(GRANDCANYON)」とデカデカと書かれた洋服が出てきました。いわゆる裏原系全盛期の頃の服です。改めて見ると「よくこんなロゴを全面に出した服着てたなあ」と懐かしくも少し恥ずかしい気持ちに。思い返してみると当時の裏原系はかなり個性的なトレンドでした。ということで今回は裏原系(裏原宿ファッション)について考えてみます。
裏原系(裏原宿ファッション)ってどんなもの?
裏原系(裏原宿ファッション)は1990年代から2000年代前半頃に起きたメンズファッションにおける一大トレンドです。
主に裏原宿と呼ばれるエリア(原宿BEAMSの裏手側一体やキャットストリート周辺)に店舗を持つブランドを中心として巻き起こった一大ファッショントレンドで、ストリート系ファッションを軸に、HIPHOP、ロック、パンクなどの要素が入ったスタイルが主流となっていました。
この頃の裏原宿一体はファッション好きの一大聖地となっており、街全体がファッションで染まっていました。
柄が悪い(笑)よく言えばアンダーグラウンド
このDragonAshのミュージックビデオを見ると当時の裏原系ファッションの雰囲気がよく分かります。
この動画を見て分かるとおり、
柄が悪い(笑)
この柄の悪さも裏原系のひとつの特徴だと思います。
裏原系ブランドのショップの多くは、現在ではちょっと考えられないほど接客態度が悪かったです。(もちろん、丁寧に色々教えてくれる真面目な店員さんもいました。)
田舎から裏原宿のお店に行った際、私の格好のダサさを店員さんが指刺して笑っているところを姿鏡ごしに見てしまい、かなり嫌な気持ちになったり(”^ω^)・・・
今となってはいい思い出(笑)ですが、今じゃ考えられない!でも、この態度の悪さ、柄の悪さも当時の「格好よさ」の一つだったのでしょう。
洋服のシルエットもややオーバーサイズなストリート感のあるものが主流で、一見南米のギャングかと見間違えるようなスタイルも流行ってました。
当時は今以上に、チーマーやカラーギャング等のいわゆる「不良」と言われる人たちが街中におり、そういった人たちも裏原系のブランド服を着て路上でたむろしていました。
このように、洋服単体だけではなく、アンダーグランウンドな雰囲気そのものが裏原宿のトレンドだったのかもしれません。「悪っぽいのが格好いい!」というような。
確かにいかにも真面目そうな人で裏原系のファッションを着こなしている人は少数だったように記憶しています。
実際私が裏原宿のショップで後ろ指刺されて笑われたのも、店員さんの態度の悪さもファッションの一つだったからかもしれません。単純にダサかったからというのもあるのでしょうが・・・。
当時は腹が立ちましたが、今考えるととても面白い文化だったなと思います。
ブランドロゴやブランドを象徴するイラストが全て
では、裏原宿系の洋服はどのようなものが流行っていたのかと思い返してみますと・・・
とにかくそのブランドと分かるロゴやイラストが全面にプリントされているものが人気でした。
バウンティハンターのガイコツのロゴドーン!
エイプのイラストドーン!
グランドキャニオンのロゴドーン!
みたいな感じが人気だったかと。
一目見て◎◎のブランドの服だ!バッグだ!と分かるものが人気でした。
今ではどんなブランドのものでさえ、ロゴが全面に出ているとそれだけで嫌味に感じてしまい買い控えてしまいがちです。
しかし当時はむしろブランドものだと一目で分からなければ意味がない!ぐらいの勢いでブランド名が全面に出た商品が人気でした。
一方で洋服の質については意外とこだわっているものも少なからずあり、今改めて見ても「これは!」と思えるような縫製のこだわりが見て取れるアイテムもありました。
ただ、ロゴがプリントしてあるだけでジーンズショップのオリジナル品と大して変わらないTシャツが1万越えなんてことも多々あり、質よりもブランド名で売れていた商品もかなり多かったです。
ブランドロゴが背中に入っているだけで、町のイベントでおっちゃんが着ているシャカシャカウィンドブレーカーと変わらないものが2万3万とか・・・。
だってロゴが入っていれば皆買ってくれるんです。そりゃ作る側もロゴだけプリントして安価な作り方しようと思います。ビジネスですし。
今は高い服には高いなりの明確な理由を示すことができないとなかなか売れません。
ブランド力に頼り値段だけ高い商品を作っても「だったらユニクロでいいじゃん!」「無印でいいじゃん!」となってしまいます。
当時はシルエットや生地感よりも「どこのブランドの服か」が重要だったのです。
今思えば私自身も「シルエットや素材なんてどうでもいいから、とりあえずエイプの猿のイラスト入ってる服くれ!あああ!」と思いながらショップに行ってました(笑)
懐かしいブランドたち(WTAPS、SWAGGER、UNDERCOVER、GOODENOUGHなどなど)
では、当時どのようなブランドがあったのか。思い出して列挙してみましょう。
( )内は当時の私の勝手なブランドイメージです。本当に勝手です。
WTAPS (有名。オシャレ感が他よりちょっと高い。少しワークテイスト。カーキ色。) GOODENOUGH (有名。着てるだけで自慢できる系。変わった形の服も。ザ・裏原って感じ。) SILAS (ほぼ全ての服におなじみのロゴが入っててロゴ屋さん的な雰囲気ある。だがそれがいい。) GRANDCANYON (有名。GDCのロゴが皆と被ってちょっぴり恥ずかしい。でも気にしない。) SWAGGER (ややHIPHOPなイメージがある。他ブランドと比較してアンダーグラウンドな雰囲気がやや強い。) UNDERCOVER (有名。今でも人気ある。何となく敷居高い。持ってると羨ましがられる。) HECTIC (裏原系の中でも割と後発だったような。名前のせいかカクカクしたイメージ。後年はワールド傘下に。) NEIGHBORHOOD (いつも混んでる。店の中見えないから怖い。物はいいのかも。今でも人気ある。) A BATHING APE (いつも混んでる。有名すぎる。Tシャツがアクリル板にサンドイッチされて置いてあった。) COREFIGHTER (ちなみにガンダムではない。KJ。CのTシャツ。) DO A RAT (2階にレゴショップがあった。ネズミさん。いや、アルマジロだったかな?) montage (地下にあった。比較的店員さん親切だった。店内もアイテムも基本的にモノトーン。) BOUNTY×HUNTER (お店の人が深夜のテレビに出てた。ブラックフライのサングラスの人。) A YELLOW RUBY? (お店がかなり狭い。でも他の店と雰囲気が違っていい。店長個性的。) DEVILOCK (友達が福袋の中身のガッカリ具合に愕然としていた。でも服は格好よかった。) BOOTLEG BOOTH (意外と小物が良かったような。ブレスレットとか。音楽的な雰囲気強かった。) あきず (裏原宿後期。和テイスト。ここのサイコロブレスレット欲しかったのに即完売してた。) REVOLVER (有名だけどちょっと玄人感があっていい。雑誌でやたら推されてた。) TENDERLOIN (チェックのウールシャツが格好良かった。派手な服ではないけど質は良かった。) などなど…… |
まだまだたくさんあったはず!でもたくさんありすぎて、このぐらいしか思い出せません( ;∀;)
まだHPがあるブランドはリンクをつけてみましたが、やはり多くはブランド終了しています。
この中にあって未だに同じ場所で店舗を存続している、
NEIGHBORHOOD
は目を見張るものがあります!
洋服の雰囲気も当時と大きく変わっていない。きっとコアなファンが未だについているのでしょう。
ブランド古着屋さん等でもよくネイバーフッドのアイテムを見かけますが、今見ても格好いいです。
この2つの他にも、UNDERCOVERは最近GUとのコラボで話題になっていましたし、エイプについても当時とだいぶイメージは変わりましたが外国人を含めファンが多いです。
個人的に思い入れがあるのはmontage(モンタージュ)です。
上にも書きましたが、店員さんが比較的親切だったので今でも良いイメージがあります。ただ残念・・・ 今は活動を確認できませんでした・・・。
こうやってみると活動しているブランドもあるものの、ほとんどのブランドが終了または閉店しており、流行の移り変わりの激しさを感じます。
あれだけ人気があったブランドも10年もすれば消えてしまう。ブランディングって難しい。
裏原系(裏原宿ファッション)は完全に消えたのか?
その後、ノームコアなスタイルへと徐々にトレンドがシフトしていき、裏原系はトレンドとして終焉を迎えました。
裏原宿と言われる一帯も今ではショップの大部分が変わっており、街の雰囲気も大きく変わっています。
裏原系全盛期に大人気であったセレクトショップ MADE IN THE WORLD も今はありません。あのアンダーグラウンドな雰囲気はなくなり、オシャレな飲食店があったりと客層も少し異なっています。
ただ、完全に消えてしまったのかというと、そうは言えないかと。
裏原宿自体はテイストこそ異なりますが、未だにファッション感度の高い人に指示されるショップは多いですし、先述のとおりいくつかのブランドはまだ存続しています。
そしてトレンドは繰り返します。
裏原系全盛期の頃に同時並行的に起こっていたスニーカーブームが、過渡期を迎えたとはいえ現在も再来しています。
同じく裏原系の少し前からほぼ同時期にかけて盛り上がっていた古着が今また注目を集めています。今は古着というよりヴィンテージという言葉をよく使いますよね。
SDGsの観点からもリユース市場は今後も注目を集めていくでしょう。
そして現在の一大トレンドとなったビッグシルエット。これも裏原系の少し前から流行った腰パンなどのルーズスタイルと重なりますよね。(現在のほうがかなり上品ですが)
こうやって考えると、テイストはだいぶ異なりますが、裏原系全盛期頃のトレンドの一部が、現在のトレンドとして形を変えながら再び盛り上がってきていることが分かります。
全く同じということはないでしょうが、当時の裏原系のようなアンダーグラウンド感のあるスタイルが再び流行る可能性は十分あると思います。
現在はユニクロ、GU、無印良品といった量販店が、安価でも質が高くトレンドにも乗った商品を提供しているため、当時のようにロゴだけで高い商品が売れるというのは考えにくいですけどね。
ただ、個人的には店員さんが怖いのは嫌なので、柄の悪さだけはトレンドになってほしくない!
ここだけはトレンドになってほしくない!
ということで、今回は裏原宿ブーム(裏原系)についていろいろと思い出しながら考えてみました。昔のトレンドを思い出すと時間を忘れてしまいます。
当時を経験した人の中には「今思えばどうしてこんな服にこんな大金払ったんだ」と思う方も多いと思いますが、それもまたいい思い出ですよね。
当時のファッション好きの人達が作り上げていた裏原系の熱気は街全体を活性化してましたし、その街の熱気を感じれたことも今ではいい思い出です。
裏原宿に ありがとう!!
当時と比較すると、現在は服好きにとっては値段も質もスタイルも選択の幅が広くていい時代です。時代が変わればファッションも変わる。洋服って面白い。
参考図書として、こちらの書籍にも裏原宿全盛期について記述があります。興味がある方は是非手にとってみてください。ファッションの歴史がカラー写真多めで分かりやすく解説されています。3,850円とお高いのですが…
ファッション イン ジャパン1945-2020ー流行と社会ハアハア(*´Д`) 久々に裏原宿に行きたくなってきました。
では、また^^
※もう一つの裏原宿ブームについて、HYOMAというブランドを中心に記事を書いていますので、こちらもどうぞ。